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​『イ草と畳本当』

イ草と畳が辿る道

◆ 土佐表が辿る道

 

昭和40年代、高知県だけでも2500軒以上あったイ草農家は、平成29年現在、四国では土佐市に残る3軒のみとなりました。
背景には、1997年に起きた中国産の大量輸入によるイ草の大暴落(2001年セーフガード発令)と一般住宅のフローリング化による需要の低下が大きな原因です。
こうした厳しい状況下で経営の立て直しができずに命を絶たれた方もおり、多くの農家がイ草から離れて行きました。
イ草栽培は田んぼに氷が張る極寒の時期に植え付けし、ジリジリと陽が照る真夏に汗だくになって収穫し、泥にまみれながら泥染めし、土埃の中で畳表を織る、とても苛酷な仕事です。
逆に言えばそんな苛酷な仕事でありながら厳しい状況に身を置き、何故この3軒の農家はイ草を続けているのか。
そこには納得のいくイ草を栽培するために試行錯誤を重ね、確かな技術を追求する熱意と産地を絶やしたくないという強い想いがあります。
特に父から子へ、子から孫へとイ草栽培を受け継いで行こうとする野村和仁氏のイ草栽培に掛ける情熱と誇りは半端ではありません。
徹底した管理と品質の維持向上のための研究、「お客さんを裏切れない、お客さんに満足してもらいたい」という想い、そこから生み出されるイ草が『土佐い草』なのです。

◆ 土佐い草は丈夫さが身上

水質日本一を誇る仁淀川水系の水と粘土質土壌で栽培されるため、とにかく丈夫に育ちます。
特に野村和仁氏が栽培するイ草は在来種の遺伝子を多く残す昔からの品種(岡山3号、せとなみ)で栽培されているため表皮が厚く、灯芯が詰まっていて、全国で生産されている畳表の中でも他の追随を許さない耐久性を誇ります。

仁淀川下流域/土佐市

◆ 土佐のイ草の品種​とその特徴

 

①「せとなみ」(昔からの品種、白系)/生産者;野村氏

「せとなみ」は「アサナギ(熊本県原産)」をもとに広島で改良された品種です。最高級品畳として名高い『備後表』はこの「せとなみ」かもしくは「いそなみ」という品種のイ草で製造されています。

かつて高知県で栽培されていた「せとなみ」は、その品質の高さから備後表の増量材として広島県に出荷されていました。

▽「せとなみ」の特徴

  • 連作障害に弱く、弱い土壌では育たないため、育てることが非常に難しい。

  • 粒が太い。(厚みのある畳表になる)

  • 光沢がよく、綺麗な黄金色になる。

  • 表皮が硬く、色褪せしにくい。

  • 灯芯がしっかり詰まっている。

​ (吸放湿性、クッション性などイ草の効果を発揮するための重要ファクター)

②「岡山3号」(昔からの品種、白系)/生産者;野村氏

「岡山3号」は全てのイ草の比較基準とされているイ草で、全国どこでも通用すると言われるほど優秀なイ草です。

▽「岡山3号」の特徴

  • 連作障害や病気に弱く、弱い土壌では育たないため、育てることが非常に難しい。

  • 粒が太い。(若干だが「せとなみ」よりもさらに太い)

  • 光沢がよく、綺麗な黄金色になる。

  • 表皮が硬く、色褪せしにくい。

  • 粒が揃っていて、バラつきがない。

  • 灯芯がしっかり詰まっている。

​ (吸放湿性、クッション性などイ草の効果を発揮するための重要ファクター)

京都もとやま畳店オリジナルブランド 「龍洛」

写真協力 京料理「さつき」 「もとやま畳店」

 ー龍洛 RYORAKUー

昭和40年頃に生産されていた土佐い草は、畳表ブランドの頂点に君臨する”備後表”の増量材としても利用され、当時はその品質の高さから『青いダイヤモンド』と称されるほどでした。

その頃、土佐で栽培されていた品種が「せとなみ」と「岡山3号」です。

20年以上も使用できる優れた”耐久性”と、畳の重要な評価基準である”色の変化”(畳独特の美しい黄金色への変化)において評価を得てきた『土佐表』

​「龍洛」は当時と変わらぬ”本物”の『土佐表』を製造する唯一の存在 野村和仁氏の畳表が使用されています。

③「とさみどり」(新種)/生産者;高達氏 岡崎氏

「とさみどり」は熊本県のイ業研究所で品種改良により誕生しました。しかし熊本県ではうまく育たなかったため栽培品種として採用されませんでしたが、高知県ではよく育ったため、以降栽培されています。高知県がイ草の栽培にいかに適した環境なのかを裏付ける出来事かもしれません。​

また、土佐い草商品「束ね」や「こんまい」は主にこの「とさみどり」で作られています。

▽「とさみどり」の特徴

  • 成長力が高い。

  • 青みが強い。

  • 新種の中では表皮が強い。

  • 新種の中では粒が太い。

豆知識 ~新種と白系(昔からの品種)~

 

昔からの品種は健康的な土壌でしか育たないため、栽培すること自体が非常に難しい。そのため品種改良は通常、連作障害や弱い土壌、天候不順などでも成長する環境に強い品種を求めて改良がなされる。

さらに九州地域では『青』を売り出す戦略で品種改良を行っている。これは、市場での畳表の判断基準に「青いもの」、特に畳表の裏(淵/切り捨てる部分)までが青いものほど値が高くなることから、イ草が長く、根元まで緑色が通る改良が進められている。

 

これに対し昔からの品種である『せとなみ』『いそなみ』『岡山3号』などは白系と言われており、品種改良された新種に比べ表皮が厚く非常に硬い特徴を持つ。畳表を製造する際にはイ草を湿らせ柔らかくしてから機械織りしていくのだが、硬いイ草を柔らかくするためにはさらに加湿する必要がある。イ草を余計に湿らせるということはそれだけ色が抜けることになり、そのため昔ながらの品種により織られる畳表は白系といわれる。

 

逆に新種は表皮が薄く柔らかいため、製織する際にも加湿する水分量が少なくて済むことから青さが濃く残る。このことも九州地区で『青』で売り出す戦略を後押ししている。新種は新畳時の美しい青さが最大の特徴と言える。

これに対し白系の最大の特徴は耐久性である。表皮が強いため毛羽立ちにくく、粒が太くて芯が詰まっていることからクッション性に優れていて、そのため長持ちするのである。

 

さらに白系の特徴に色がいわゆる『黄金色』に変化し、光沢が出ることがあげられる。これも表皮が硬いことに起因している。新種は表皮が薄いものが多く、白系に比べ茶色く変化する。この差は他の植物の枯れ方からも伺える。葉の表皮が強いものは黄色く、弱いものは茶色く枯れる。

白系は年月が経つほど、その良さを発揮するイ草なのである。

◆ 土佐イ草の栽培

い草は田んぼで育つ農作物です。

一番寒い冬に植付(うえつけ)を行い、一番蒸し暑い7月に収穫します。イ草栽培はすべての作業が重労働で、一昔前はあまりの重労働に逃げ出す働き手もいました。

現在は昔に比べれば機械化も進みましたが、それでも杭打ちや網張り、泥染めなど人の手で丹精込めてやらねばならない作業も多く、イ草農家の手間と労力は相当なものです。

つくりて

◆ イ草農家に聞く

~生産者の想い~ 野村和仁(高知県土佐市)

 

 

畳表の卸市場では、販売時にいかに緑色が濃く残るかという見た目の美しさが重視されます。そのため、多くのイ草農家が品種改良された見た目の美しい新種のイ草へと移っていく中、ささくれにくく、丈夫で長持ちする畳表を追求し、昔からの品種を栽培する野村和仁氏。

全国でもほんの数件、土佐市では唯一の昔からの品種によるイ草栽培にこだわる『野村イズム』についてお話を伺いました。

Q.卸店経由やセリによる販売ではなく、野村さん自らが営業活動をされているのは何故ですか?

 

やっぱり折角農家の想いで商品を作って流通に乗せても、消費者に届く間にその想いは打ち消されてしまって、いつの間にか流通業界の思いの商品に変えられてしまう現実がある。卸屋に「農家の代弁者となって農家の想いや商品の本当の魅力を伝えて欲しい」と言っても、逆に自分たちにとって売りやすいもの(見た目の良いもの)を作ってくれと言われる。そんなところにやっぱりこう腹立たしさというかやりきれないものがあって、何とか流通に頼らない販売をしていきたいっていう想いから今の販売方法に至っていると思います。

 

 

Q.栽培が難しく、全国的にも今ではほとんど栽培されていない昔からの品種を扱っているのは何故ですか?


10年経っても擦れないで、使っているうちに光沢が出て、お客さんから「長持ちしたよ」っていう言葉を20年後に聞かせてもらいたいからです。
近年の気候変化もあって、イ草の栽培はより難しくなってきましたが、管理など色々改善できるところはあると思って努力しています。

 


Q.昔の土佐のイ草は備後表として売られていたと聞きました。


自分が若い時土佐のイ草は備後の増量材として出荷されていて、備後ありきの土佐表という屈辱のような時代を送ってきた歴史があります。いつかは「土佐表」という名前で全国の方に認知してもらいたいという思いでやってきました。先日備後の視察にも行きましたが、生産量は激減していてこのままでは、「文化の備後」になってしまいます。それに代わることのできる商品は全国でも自分のイ草だけではないかと勝手に思っています。

 

Q.仕事に対する野村さんの信念を教えてください。

 

今の卸市場などは如何に青くて美しいかが畳表の最大の評価基準になっていますが、昔はどれだけ長持ちするかや使っているうちに光沢が出てきて綺麗な黄金色に変化するかが評価されていました。その時々のニーズに振り回されるような畳表ではなくて、後々「良かった」と言ってもらえる品づくりに打ち込んでいきたい。
頑固な生き方と思うがお客さんを裏切ってはいけない。お客さんのお金の価値が生きるような品を提供したい。それが僕のイ草作り、畳表作りです。

 

Q.息子さんはイ草作りはいつから?

学校が済んでこの春からやっています。

自分も後継者として息子がやると言ってやってくれているので、その子がこの先に家庭持って家族を養えるぐらいの価値の畳に仕上げるのが親としての最後の務めかなと思っています。

ただ、自分の時は地元で色んな情報が入り、色んなことを学べたけどもう情報がない。農協や振興センターで聞いてもダメ。やるのだったら八代に友達を作らないといかん。向こうにはきちんと研究者がいて、病虫害の対策とか色んな商品の話も信頼関係を築くことによって聞くことができる。自分から仲間を作ってそういう情報を仕入れていかないと情報が無い世界でやらないといけないから覚悟しておかんといかんでと言っている。

イ草は田んぼで育つ農作物です。

一番寒い冬に植付(うえつけ)を行い、一番蒸し暑い7月に収穫するイ草栽培はすべての作業が重労働で、一昔前はあまりの重労働に逃げ出す働き手もいました。

現在は昔に比べれば機械化も進みましたが、それでも杭打ちや網張り、泥染めなど人の手で丹精込めてやらねばならない作業も多く、イ草農家の手間と労力は相当なものです。

野村イズムの基礎を築いてきた野村和喜さん(左)

それを受け継ぎ育ててきた野村和仁さん(右)

次の野村イズムの継承者となる野村智仁さん(右)

◆ 野村農家の畳表を50年使う畳店の声(愛媛県)

野村さんの土佐表はとにかく擦れない。丈夫。他のものとは全く違う。
畳の命は強く丈夫であることだが10年くらい使ったところで何ともない。
特に人がよく使う場所では絶対に良い。
例えば葬祭場だと着物で出入りし摺り足で歩くため毛羽立ちやすい。
そのうえ着物にクズがついたりすることは絶対にいけないが野村さんの畳表だとその心配がない。
野村さんは刈り取り一つにしても日数を数えて十分な実入りを待ってから刈っている。青い時期に刈れば見た目はきれいかも知れないが、実入りが十分でないからすぐに擦れるし弱い。
また、しっかり乾燥させてもいるので硬くて丈夫。
自分のした仕事は何十年経っても自分に返ってくるので、もう何十年も野村さんの畳表を使わせてもらっている。

願い

◆畳の流通と販売の現実

イ草は中国産の輸入や住宅のフローリング化によって淘汰され衰退を迎えた産業ですが、原因はそれだけではありません。実はイ草や畳産業に携わる人たちの意識や手によって衰退を加速させた部分も大きいのです。 


高度経済成長期時代、増え続ける畳の需要に国産のイ草だけでは対応できず、イ草の苗を中国に運んで栽培し、日本に輸出する事業が開始されました。
しかしながら、イ草の栽培は良い苗を使えば良いイ草が育つという簡単なものではありません。他の伝統産業と同様に、そこには知識、経験、技術、そして何より想いがなければ良いイ草は作れないのです。 


結果として、イ草の命とも言われる灯芯(イ草の中に詰まっているスポンジ状のもの)部分が詰まっていないクッション性に欠ける硬い畳、表皮が弱く傷みやすいためすぐにささくれや毛羽立ちをおこす畳、イ草の色のばらつきを隠す、あるいはよく見せるために着色料で着色された畳、その着色料が皮膚や衣類に付き痒みや肌荒れを起こすなど安全性に問題がある畳が流通しました。 


当然、消費者からはクレームが出てきます。
それを避けるために生まれたのが工業製品の畳です。
「家を建て、欲しかった和室を作ったが畳の匂いが全くしない。
なぜだろうと住宅メーカーに問い合わせたら『和紙でできた畳です。カビが生えないし虫もわきません。アレルギーの心配もありませんし、畳替えもしなくて済みます。』と説明された。」
私たちはこうした話を多くの方から聞きました。 

畳店も住宅メーカーもクレームを避けることを優先して、イ草で織られていない工業製品の敷物を「畳ですよ」と言い、消費者に選択させることなく備え付ける。そこにあるのは目先の利益が優先という自分だけを大事にした身勝手な考え方です。


 その極めつけが産地偽装です。 


イ草は農産物でありながら敷物という工芸品であるため生産者や産地について食品ほどの厳しい規格がありません。
H21年の全国イ草生産販売連合会の報告によると、「実際の国内産畳表の生産量が450万畳で総需要量1650万畳の27%であるのに対し、国内産畳表として流通したものは全体の52%であり、この25%のギャップから中国産が国内産として流通していることが否定できない」としています。 


結果国産の畳は価値を失い、それどころか畳への悪評を招き、産業が衰退していくこととなったのです。


近年ではそうした反省を踏まえ、畳本来の良さや価値を伝えようとする畳店も徐々に増えてきたようですが、長年の体質はそう簡単に変わらないのが現状です。

 

◆ じゃぱかるの願い

じゃぱかるの願いは「畳が売れたらいい」ということではありません。


廃れつつあるイ草産業と畳文化の背景や良さを多くの方に知ってもらい、そのうえで消費者が日本のイ草で織られた畳に価値を感じ、選び、使うことでイ草産業と畳文化が残っていくことです。


また、それだけでなく取り巻く環境が厳しい中イ草づくりを続けきた農家や産地を守るためにも畳業界とは一線を画す方法で中国産や工業製品への過度な依存を断ち切ることができればと考えています。

20年以上使われてきた野村氏の畳表

土佐い草のつくりて